2019年3月9日(土)「躍進する大陸・アフリカとの共創と協働」へ参加しましたので、速報をお届けします!
LEKKER AFRICAの伊関です。TICAD Ⅶに向けて、産官学のこれまで、そして、これからの取り組みの全体感を掴める会に参加してきましたので、速報レポートにまとめてお伝えいたします。
超速報ですので、内容が聞いた話と違うというような部分がありましたら、お知らせいただけると幸いです!
会議の趣旨
産官学の主要関係者が日本とアフリカの関係を発展させるための取組みと連携の道筋を提示するとともに、TICAD第7回会議をどう応援するのか様々な方面の方が決意を表明されました。
*TICADとは,Tokyo International Conference on African Development(アフリカ開発会議)の略であり,アフリカの開発をテーマとする国際会議です。1993年以降,日本政府が主導し,国連,国連開発計画(UNDP),アフリカ連合委員会(AUC)及び世界銀行と共同で開催しています。(引用:外務省)。
当日のご登壇者
- 日本・アフリカ連合(AU)友好議員連盟会長・衆議院議員 逢沢一郎
- 外務省アフリカ部長 牛尾滋
- 横浜市副市長 渡辺巧教
- 世界銀行駐日特別代表 宮崎成人
- 国連開発計画(UNDP)駐日代表 近藤哲生
- アフリカ協会理事長 大島賢三
- 日本経済新聞社 執行役員 クロスメディア営業統括補佐 特別企画室長 塩﨑祐子
- NHK 前ヨハネスブルク支局長 名古屋放送局報道部副部長 味田村太郎
- 経済同友会アフリカ委員会委員長 豊田通商顧問 横井靖彦
- 経済同友会アフリカ委員会副委員長 シブサワ・アンド・カンパニー代表取締役 渋澤健
- JUJUBODY 創設者 大山知春
- 名古屋大学アジア共創教育研究機構 教授 山田肖子
- 市民ネットワーク for TICAD(Afri-Can)代表 稲場雅紀
- ニャティティ(ケニアの伝統楽器)奏者・歌手 アニャンゴ
- 持続可能な社会に向けたジャパンユースプラットフォーム(Japan Youth Platform for Sustainability: JYPS) 山口和美
各セッションのサマリー
日本・アフリカ連合(AU)友好議員連盟会長・衆議院議員 逢沢一郎
アフリカは人口が13億から30億人、多ければ、40億人になると言われている。
他方、貧困、気候変動の農業へのインパクト、それに伴う欧州への移民増加などネガティブな要素は拭えない。
こうした状況に対して、TICADの理念である「アフリカの人のオーナーシップ」と「国際社会の応援」で課題を乗り越えていきたい。
今や環太平洋の概念はインド洋に推し広がり、結果、アフリカにも及んでいる。
アフリカも中国やASEANのように発展していくことを期待している。
横浜市副市長 渡辺巧教
主に次の3つの領域に取り組みを進めてきた。
「国際技術協力の拡大」
→ 例)水道、廃棄物管理の視察の受け入れ
「ビジネス支援の強化、女性の活躍推進」
→ 例)アフリカビジネスセミナー、日·アフリカビジネスウーマン交流プログラム、JICAが支援し、これまで20カ国88人が参加
「次世代育成·市民交流の充実」
→ 例)アフリカとの一校一国での交流、アフリカ開発学生会議
上記に加え、TICAD認知向上施策として、次のことに取り組んでいる。
・会議開催の100日前イベントを開催予定
・TICADをPRするパッケージの水を販売したり、公共バスをPR車両にしたりと宣伝を強化
国連開発計画(UNDP)駐日代表 近藤哲生
現在はジェネレーション、セクターを超えて連携し、「誰ひとり取り残さない、持続可能な社会」を目指している。
アフリカを取り巻く環境は「アフリカの躍進」に象徴されるように、経済成長、人口増加、民間資金がODAを上回るなど大きく変化している。
そうした中、アフリカ進出の日本企業は687社(日本とアフリカ、外務省)まできた。
UNDPはアジェンダ、プログラム、アドボカシーの観点からアフリカ支援をしていく。
普段滅多に会えない人に会うために、ぜひUNDPを使って欲しい。
世界銀行駐日特別代表 宮崎成人
第二次世界大戦後、戦争で荒廃したインフラを復興させる目的で作られた国際金融機関の1つ。
箱物を作れば、成長するわけではない。
人間一人ひとりの潜在能力を伸ばすために何をすべきかを考えて、適切なパートナーと連携していく。
世界銀行は4つのグループ(IBRD、IDA、IFC、MIGA)からなる。
取り組み分野としては、次の3つ。
「保険分野」
・TICAD VI UHC促進フレームワーク UHC in Africa
・パンデミック緊急ファシリティ (PEF)を通じたエボラ対策
「民間資金の動員」
・IFC/MIGAを通じたアフリカ各国の民間セクター支援
・Private Sector Window(IDA:最貧国支援)
「デジタル·エコノミー促進」
・デジタル·エコノミーの基本的基盤の構築、起業家支援、科学技術分野の人材育成
・革新的なイノベーションを推し進めるのが経済的な力をもたらす
・そのために光ファイバーとかのインフラ導入に加えて、その使い方を教える
・日本のスタートアップとの連携もしていく
アフリカ協会理事長 大島賢三
アフリカ協会はこれまで、「機関紙の発行などの情報発信」、「官民、外交団との接点の提供」を行って来た。
TICADに向けては、具体的、かつ、実践的な提言をしたい。
「TICAD情報センター」
・エチオピア(アフリカ連合の本社)にオフィスを作りたい
・アフリカの政府や学生、企業に対する広報
・英語、フランス語で情報発信
・情報収集もするが、安倍イニシアチブの卒業生がどう活躍しているかをフォローアップ
・青年海外協力隊のOB、民間の人などにやってもらいたい
・TICADⅦのHPを立ち上げることからやる
「日本アフリカパートナーシップファンド」
・日本とASEANの関係から学べることがある
・アジアではシンクタンクを作ったり、ファンドを組成した歴史がある
・日本ASEAN統合ファンド、6億ドル以上
・今回は規模は小さくて良いので、ファンドを作って、支援したい
・中国との競争の中で、アメリカもアフリカ支援を見直している
・TICADの競争環境が激化している
市民ネットワーク for TICAD(Afri-Can)代表 稲場雅紀
現在、アフリカ向けの日本のNGOは100団体くらいある。
90年代から支援が始まっている。
国数でもアフリカ30カ国に及ぶ。
ケニアのような東アフリカのみならず、サヘルや中央アフリカにも出ている。
”躍進しているアフリカ”においては、NGOの役割を再定義する必要がある。
「国家がやるべきことをNGOや国際機関が奪っている。中長期的にはアフリカのためにならない。」という現地の人の声もある。
国家と市民の関係を作り直すことにNGOがチャレンジすることに今後意義があるのではないか。
お母さんに優しい国と言えば、北欧がまず頭に浮かぶ。
ただ、実はアフリカは環境は厳しいが子育てはしやすいと、住んだ人は口を揃えて言う。
あるナイジェリアの貿易商の社長は日本でリサイクル法を学んだという。
LGBTの難民キャンプ、第三国出国を日本のトランスジェンダーのリーダーが支援している。
これまでになかったような人間と人間のつながりが日本・アフリカの間で新たに形成されつつある。
そういう市民社会レベルでの新たな関係性を大事にしながら、NGOとしての役割を見直していく。
持続可能な社会に向けたジャパンユースプラットフォーム(Japan Youth Platform for Sustainability: JYPS) 山口和美
JYPSは、国内外の政策決定の場に対して、若者の意見を集約し、届けるためのプラットフォーム。TICADにおけるユースの課題は次の3つ。
「経済のドライバーとして扱われるユース」
→ アフリカの若者は単なる安い労働力という文脈で捉えられている
「若者という枠組みでの投資やサポートの不足」
「アジェンダ策定プロセスへのユース参画メカニズみの欠如」
これらを踏まえて、次の3つに取り組む。
「アドボカシー」:ユース宣言の採択、外務省との対話
「アウトリーチ」:TICAD Youth Summit、本会議のサイドイベント
「ネットワーク強化」:情報発信での若者の意識向上
経済同友会アフリカ委員会委員長 豊田通商顧問 横井靖彦
知見や体験談が日本企業のアフリカ進出の後押しになるようにしたい。
アフリカに進出している30社にヒアリングしてレポートを作ったので、今後進出を考える会社は参考にしてほしい。
*「アフリカ進出のすすめ~進出企業30社の声~」
民間企業にとっては魅力的な市場である一方で、歴史的、地理的に縁遠い。
SDGsに象徴される課題を解決するには、地域に根ざしている民間セクターが役に立つ。
政府、アフリカのビジネス環境整備が必要であり、楽観的な側面だけではないことは事実。
一方、メディアには、ステレオタイプではない、希望の大陸の側面も発信してほしい。
各ファンクションが知見、エネルギーを結集し、ビジネスコミュニティにおける機運を醸成していきたい。
そのため、政府、国際機関とのネットワーキング作りにも力を入れたい。
経済同友会アフリカ委員会副委員長 シブサワ・アンド・カンパニー代表取締役 渋澤健
経済同友会アフリカ委員会はTICAD Ⅴ(2016年)の頃、立ち上がった。
現在はアフリカ起業支援コンソーシアムというものを運営している。
数百万円程度を支援するもので、50名の応募者に対して、10人を支援して来た。女性が多く、6名を占める。
若手起業家がウガンダ、モザンビーク、ケニア、ガーナなど幅広い国で活躍している。
共通点はアフリカを愛して、アフリカとともに事業を拡大したいとこと。
アントレアフリカのfacebookにて起業家がアフリカの情報発信をしている。
今後は、投資の幅をフェーズに合わせて最適なものを3つ考えていきたい。
「アントレアフリカ」のように初期段階で起業家を支援するものから、主に、経済的リターンを期待する「アフリカ投資ファンド」、さらに、経済的リターンと社会的インパクトの両方を期待する「社会的インパクトファンド」。
いずれも、効果を計測可能であることを意識する必要がある。
JUJUBODY 創設者 大山知春
アフリカの自然生まれのナチュラルスキンケア商品のJUJUBODYを生産・販売している。
オランダの大学院を卒業後、学生時代の友人とガーナで起業した。
JUJUは西アフリカの特定の地域で使われる「魔法をかける」という意味の言葉。
自然さにこだわり、未精製素材を厳選している。
スキンケア商品の販売に加えて、ガーナで新しいプロジェクトをやりたい企業を支援し、PJマネージャー的な動きを担っている。
オランダの大学院にいたこともあり、現在はオランダ企業の支援が多い。
また、モリンガというスーパーフードの認知度をあげることが今年の課題の1つ。
必須アミノ酸を全て含む唯一の植物で、栄養価がとても高いことで知られる。
ここ5年で徐々に商業化してきたが、認知度がとても低い。
一回限りでリピートオーダーが少なく、需要が安定しない課題がある。
『奇跡のモリンガ』、幻冬舎という本の中で、詳しく紹介しているので、ぜひ読んでほしい。
名古屋大学アジア共創教育研究機構 教授 山田肖子
名古屋大学のゼミでは、安倍イニシアチブの学生たくさん受け入れている。
修士博士を合わせて、30名のうち、5分の1がアフリカ。
民間企業にとってアフリカは、アジアに比べ、経験·知識が不足。
現地の人はどこまでできるか不安。
アフリカでは雇用が拡大しているが、依然労働生産性が低いという課題がある。
どこの国も人づくりが大事ということで、職業教育に予算をつけているが、どういったスキルに投資すれば良いかがクリアではない。
そこで、開発需要の交差点としての産業人材育成、アフリカの産業人材の技能評価の研究をしている。
Evidenced baseな研究によって、官民にとって有用な提案をしていきたい。
日本経済新聞社 執行役員 クロスメディア営業統括補佐 特別企画室長 塩﨑祐子
TICAD Ⅶへのグループとして、取り組みを紹介。
グループとしてモメンタム形成のための大型特集を5媒体で組む。
FTは長くアフリカをカバーして来たこともあり、今回はFT交えて、英語でも発信を強化する。
日経·FTの相互でロゴを入れて展開したり、TICAD後のフォローアップイベントを開催するなど、よりインパクトを大きくしたい。
直近では、『逆説のアフリカ』が日経ビジネスから出版されるなどアフリカ熱は社内でも高まりつつある。
NHK 前ヨハネスブルク支局長 名古屋放送局報道部副部長 味田村太郎
2014年にヨハネブルグ支局ができた。味田村太郎氏が初代。
社内でも若い記者を中心にアフリカをやりたいという人が増えている。
飛躍しようとしていてる、希望の大陸的な側面もアフリカにはある。アフリカの等身大の姿を伝えていきたい。
例えば、宮崎駿に感動してアニメ作りを始めたコンゴ出身のパスカルさんを取材したことがある。
ケープタウンのタウンシップのアニメで、アフリカの暗いイメージをアニメの力で変えたいという思いで取り組んでいるそう。
ニャティティ(ケニアの伝統楽器)奏者・歌手 アニャンゴ
ニャティティというケニアの伝統楽器に惚れ込んで、師匠に弟子入りを申し出るも、断られる。
というも、ニャティティは歴史的に、ケニア人の男性にのみ免許が許されてきた。
ただ、何度断られても、通い続けた結果、村に住んでもいいと言われた。
それから、数ヶ月後にようやく弟子入りできた。
そして、世界初、女性のニャティティ奏者として師匠から免許を受け取った。
その際、「これからは私がいけないところに行ってニャティティを広めてくれ」と言われた。
アニャンゴ(Anyango)は午前中に生まれた子どもの意。
損得抜きにして、互いをリスペクトし合うことができるという意味で、音楽、ダンス、文化的なアプローチはとても有効だと思う。
外務省アフリカ部長 牛尾滋
躍進するアフリカという一方で、現実問題としては、「沈むアフリカ」という側面もある。
新たな問題は、アフリカの中での格差が出始めているということ。
国の援助の時代ではない。民間資本をいかに開発に回すかがキー。
ODAの役割も変わって来ている。現在は民間の活動を促進する役割。
本番前にG20がある。G20の成果をどうアフリカに展開するかが重要。
TICADも中国、アメリカとの競争に晒されている。
その中で、 TICADにおいてはサイドイベントをいかに盛り上げるかが大事。
ダボス会議のようなサイドイベントをTICADの名の下にどこまで盛り上げられるか。
参加した所感
アフリカには成長と格差拡大といった光と影の側面はありつつも、ひたむきに努力して来た結果が、産官学それぞれの分野で芽を出し始めている、そんな印象でした。
私の周囲が特殊なのかもしれませんが、アフリカに飛び出して、起業する若者もちらほら出て来ていていたり、ファッション、アートの分野でもアフリカの話を耳にしたりします。
これまで地理的、歴史的に、縁遠かったアフリカではありますが、インターネットを通じて、情報も少なからず得ることができ、徐々に心理的な距離も縮まっているのではないでしょうか。
LEKKER AFRICAとしても、これまで以上にメディアとしての側面にも力を入れ、”アフリカの実像”をお届けできるよう努力を重ねていきたいと思います!
開催場所はYahoo! JAPAN(ヤフー)のセミナールームでしたが、施設がとても広々としていて、とても羨ましかったです笑