ラッカアフリカの伊関です。
今回、麹町にあるグロービス経営大学院 東京校にて勉強会を開催いたしました。
アフリカに行ったことがある方、興味がある方、アフリカ関係の仕事をなさっている方などにご参加いただきました。
簡単な講義のあと、日本で行うアフリカビジネスや副業で事業を運営することなどについて、たくさんのディスカッションをおこないましたので、レポートとしてお届けします。
グロービス公認クラブ「アフリカ部」とは
グロービス経営大学院のクラブ活動は、社会の「創造と変革」に貢献することをテーマに掲げ、グロービスの学生が自主的に取り組む活動です。
共通の目的や問題意識を持った同志が集い、それぞれのクラブが多彩なテーマで独自の活動を展開されています。
学年の枠を超えて、在校生と卒業生が知識や経験を共有し合うクラブ活動は、志を実現につなげるための場として、大きな意味を持つものとなっているといいます。
その中で、アフリカ部とは、アフリカを起点に社会的課題の考察や、途上国のビジネス開発などの勉強会を継続的に実施し、グローバルな視点や、より深い示唆を得る機会を創出するクラブです。
在校生・卒業生約250名(2019年1月時点)が在籍し、アフリカに関わる起業家やNPO法人関係者を招いた勉強会、アフリカビジネスのケーススタディ(事例研究)、意見交換会などの活動を行っているそうです。
"LEKKER"への道のり
アフリカとの出会い
今回の勉強会は、自分たちがやってきたことを振り返る良い機会となりました。
思えば、2015年に前職トヨタのアフリカ部への異動を機に、アフリカは何て面白い大陸なんだということに気づたことがきっかけでした。
2015〜16年の2年間で、出張や旅行を含めてアフリカ大陸13カ国を訪問しました。
この頃から何か自分でもアフリカに関することをやりたいなとぼんやりと考え始めました。
アフリカの政治・経済
当時、サブサハラアフリカ(サハラ砂漠以南のアフリカ)の長期戦略をつくるという業務の中で、国連やIMF、世銀、各種調査機関のレポートなど未来予測に触れる機会がありました。
紛争や政治的混乱も徐々に収束してきた2000年以降、豊富な資源を有する国を中心に、資源価格高騰とともにサブサハラアフリカは急速に成長してきました。
その後、資源価格の下落に加え、経済的なつながりの強い中国の景気減速にともない、2015年以降、サブサハラアフリカの経済も低成長を迎えていきます。
アフリカ流のイノベーション
そうした中で、農業、資源に依存しない成長、つまり、経済の多様化を求めて、各国が成長戦略を掲げています。
たとえば、DMM Africaが進出して、さらに注目を集める東アフリカの内陸国・ルワンダなどはIT立国を標榜し、「アフリカの中のシンガポール」になることを目指しています。
2016年、わたしはケニア・ナイロビのイノベーションハブを訪れ、最新のスタートアップの取り組みを見てきました。
これまでの多国籍企業の戦略は、勃興する中所得者に対して、高品質な製品を販売することが中心でしたが、現地の多くのスタートアップはBOP(Base of the pyramid、低所得者層)向けの商品・サービス開発にフォーカスしていました。
一例として、ケニアのスタートアップの1つであるPaygo energyは、ガスボンベにIoTデバイスを取り付け、使用する度に課金する仕組みを開発しています。
この仕組みにより、ガスのインフラがなく、石炭や灯油を使っていた人たちがより安全で、健康にも良いインフラにアクセスすることができるようになります。
アフリカでは、「インフラはないが、携帯やネットはある」からこそ生まれるイノベーション、リープフロッグ型発展に期待が高まっています。
現地の人が所得を増やすには
アフリカ流のイノベーションによりインフラの民主化を図る一方、所得そのものを増やそうとすると、輸出を増やし、外貨を稼ぐ必要があります。
かつての日本は原材料を輸入、加工、輸出することで外貨を稼ぎ、成長してきました。
東南アジアでは、域内貿易を密におこなうことでASEANという地域として発展してきました。
一方、雇用を創出する工業の分野において、アフリカが中国やアジアなど既に競争力の高い生産拠点との熾烈な国際競争に挑むのはハードルが高いです。
また、隣接する国が似通ったものを持っていたり、あるいは、交通網が未発達なことから、アフリカ大陸内での貿易もさほど活発ではないという実情があります。
アフリカのオリジナリティで勝負
2016年、わたしは南アフリカのヨハネスブルグに駐在していました。
南アフリカには、ワインやルイボスティ、デザイン性に富んだハンドメイドの布など沢山の魅力的なプロダクトがあることを知りました。
また、南アフリカの公用語の1つであるアフリカーンス語には、LEKKER(ラッカ)という「美味しい・楽しい」が1つになった言葉があります。
このLEKKERの言葉の背景には、家族や友達との時間をとても大事にする文化があるのではないかと、わたしは感じています。
現地での経験から、優れたプロダクトや豊かな文化の存在を知り、日本に届けたいと思うようになりました。
しかし、最終的に、サービスのコンセプトをLEKKERに定めるまでには、帰国後、実に1年の検討期間を要しました。
その時に参考にしたのが“北欧”という地域でした。
雑貨などが徐々に日本のマーケットに浸透していった経緯はアフリカにとって北極星になるのではと直感しました。
北欧には、ヒュッゲ(大切な家族や親しい友人とともにほっこりした時間を過ごす)という文化が根付いているそうです。
この言葉に対応するアフリカのイメージ、概念は何か。
撮りためた写真を並べ、チームでブレストを重ね、出てきた言葉がLEKKERでした。
ものすごく大げさにいえば、一部のアフリカ好き閉じていた日本のマーケットをもっと多くの人に開くことで、LEKKERという文化を届けつつ、アフリカにビジネスをもたらしたいと考えるに至りました。
LEKKER AFRICAが目指すこと
アフリカのイメージを刷新したい
日本でのアフリカのイメージは、いわゆるマサイ族に象徴されるような民族的ものだったり、あるいは、紛争や貧困、汚職などエクストリームなものが多いように思います。
アフリカの国々を訪れるにつれ、これは真実の一部ではあるものの、全てではないと感じるようになりました。
美しいもの、モダンなもの、独自の色あい、エネルギッシュな雰囲気、トラディショナルで素朴なものなど。
わたしたちが知らない、様々な民族や歴史を内包するアフリカ。
テクノロジーによる独自の進化を遂げるアフリカ。
アフリカの新たな側面をきちんと発信するために、ラッカアフリカでは1分間のコンセプト動画を作りました。
伝統的な製品に加え、若手のデザイナーやクラフトマンのプロダクトもきちんと紹介したい。
そして、日本の暮らしの中で、アフリカプロダクトがどうLEKKER(美味しい、楽しい)をもたらすのかをビジュアルとして伝えたい。
こうした視点で日々事業に取り組んでいます。
これまでとは違うビジネスモデルで弱点を克服したい
アフリカと日本は物理的な距離も遠い。
すごく単純にいえば、アメリカやヨーロッパであれば、1ヶ月で届くものが、アフリカでは2ヶ月かかり、ビジネス上はディスアドバンテージです。
土地が大事なワインや生地そのものにストーリーがあるプロダクトは、船や空輸で日本に届ける必要がありますが、デザインの独自性が重要なものについては、別な届け方があるのではないか。
例えば、アフリカのデザイナーがデザインし、日本で生産・流通することで、輸送コストを抑え、適正な価格で、タイムリーにプロダクトを届けられるのではないかと考えています。
そのために、ラッカアフリカでは、現地のデザイナー、アーティストとのリレーション構築を模索しています。
アフリカに挑戦する人たちのプラットフォームを目指して
新聞やニュースでも目にしますが、アフリカ大陸で、ものづくりやサービス開発に取り組む日本人が徐々に増えています。
一方、アフリカに関する顕在ニーズはまだまだ少ない、つまり、日本でアフリカ製品をマーケティングするのは簡単ではないと言えます。
分かりやすい例で言えば、Google検索で“アフリカ”と調べる人はまだまだ限られています。
旅行にしても、買い物にしても、アフリカ関連のニーズは少なく、一部のアフリカ好きに閉じてしまっています。
だからこそ、ラッカアフリカでは、美しさ、ハッとする驚きなどをビジュアルとして表現し、インスタグラムやToutubeなどSNSを通じて、発信することで、アフリカを知らない層にリーチしていきたいと思います。
綺麗だなあと思って写真にイイねをする。結果、「これはアフリカだったんだ。」と気づく。
こういう出会い方をどんどん広げていきたいと考えています。
そして、アフリカで頑張る人たちがアフリカで作った素晴らしいモノをゼロからマーケティングせずとも、ユーザーに届けることができる世界を作れると、より多くの人がアフリカにチャレンジできるのではないかと思っています。
副業で事業を進めるコツ
どういう風に副業として事業を運営しているのかという質問が多く挙がりました。
1年ほど副業で事業をおこなってきた中で、見えてきたコツをお伝えしました。
- ミッション・ビジョンを仲間と一緒に作る
- 得意、かつ、好きなことにフォーカスする
- マイルストーンを先に置き、関係のないことはやらない
一緒に事業を立ち上げた2人のデザイナーはアフリカに行ったことがありませんでした。
なぜアフリカなのか、アフリカはどんな魅力があるのかを繰り返し伝え、興味を持ってもらいました。
そして、存在意義であるミッションや、将来ありたい姿であるビジョンを一緒に考えることに時間を費やしました。
これにより、なぜ土日の時間をかけて取り組んでいるのかに疑問を持たず、空中分解することなく事業を進められていると感じています。
また、様々なタスクがある中で、各メンバーが「得意、かつ、好きなこと」ができるようにアサインすることが重要です。
本業であれば、苦手なことにも積極的に取り組んで、スキルアップしたり、成長したりすることに時間をかけられる、時にかけるべきだと思います。
一方で、副業では時間という制約があります。
その中で、最大限パフォーマンスを出すためには、苦手なことに時間は使わず、モチベーション高くいられることが大事だと思います。
今のチームで対応できないタスクが発生した場合、能力のある人を仲間に入れる方が経験上、上手くいくように思います。
そして、あれもやりたい、これもやりたい。事業をおこなっていると、とにかく沢山のアイデアが出てくるものです。
しかし、何をいつまでに達成したいのか、どういう状態になりたいのかを定義して、それに向けて、不必要なことは思い切ってやらない。
リソースが限られた中で、何かをやり切るためには大事なポイントだと思います。
最後に
グロービス公認クラブ「アフリカ部」のみなさん、勉強会の機会をいただきありがとうございました。
今回の勉強会に向けて、私たち自身振り返りができ、また、多くのディスカッションの中で、ラッカアフリカとして、目指すべき方向性がクリアになりました。
レポートを読んでいただいたみなさま、アフリカの勉強会や南アフリカワイン会などウェルカムですので、お声かけいただけると嬉しいです。