アフリカから生まれる「新しい幸せの形」を届けたい。LEKKER AFRICA物語
みなさん、こんにちは。ライターの佐藤まり子です。
初めてLEKKER AFRICA(ラッカアフリカ)の商品とWebサイトを見たときに、自分が持つアフリカのイメージと(良い意味で)あまりに違うので驚きました。
アフリカといえば原色カラーの民族柄を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。少なくとも私はそうでした。
しかし、ラッカアフリカが扱う商品は、どこかアフリカらしさを残しつつも淡い配色と洗練されたパターンが独特の存在感を放っています。そのデザインからは「新しいアフリカ」を感じずにはいられません。
ラッカアフリカ代表の伊関さんは、この素晴らしい製品たちとどのように出会い、日本での販売を決意したのでしょう。
創業から5年目を迎え、ラッカアフリカが目指す夢についても伺いました。
南アフリカ駐在で出会ったモダンアフリカデザイン
ーーまず、アフリカをテーマに起業した理由をお聞きしたいです。
僕は新卒で2011年にトヨタ自動車に入社し、2016年から1年間南アフリカに駐在しました。その滞在期間中に、魅力的なアフリカ製品とアフリカワインに出会ったことがきっかけです。
ーー現在ラッカアフリカで扱っている製品にはどうやって出会ったんですか?
駐在期間中、土日は現地の展示会に足を運んでいました。そしてあるイベントで、モダンデザインのアフリカ製品に出会ったんです。
従来のアフリカ製品の伝統を踏まえつつも、自分らしさを追求して作ったモダンなデザインに衝撃を受けました。
ーー確かに、いわゆる「アフリカ的」な色使いや柄ではないですよね。
例えば、南アフリカのテキスタイルメーカー・Mungo(マンゴー)社には、3つの特徴があります。
- アフリカの伝統的な柄をモダンにアレンジしたデザイン
- 100年もののアンティーク織機を用いてハンドメイドで生産
- 人にも環境にもやさしい南部アフリカのコットンを100%使用
工場では、スクラップになるはずだった100年物のアンティーク織機を修理して現役稼働させています。これは単なるアップサイクルではなく、古い織機は複雑な柄を作るのに適していて、デザインにより多くの自由度をもたらしてくれるんです。
ーー伝統をもとに、新しいデザインの製品を作っているんですね。
はい。作り方もデザインも、伝統をベースにして新しい発想で作った製品が本当にたくさんあるんです。「これはこの柄の発展系だ」と教えてもらうこともあり、アフリカの歴史と文化の奥深さを感じずにはいられません。
僕が感動したように、他の日本人もモダンアフリカに興味を持ってくれはずだと、確信に近い気持ちがありました。
実際に販売してからは、お客様からも「とにかく柄がユニーク」「ありそうでないデザイン」「色々なものを超えた異国情緒がある」などポジティブなフィードバックをいただいています。
アフリカから生まれる「幸せの形」を求めて
ーー確かに、北欧や東南アジア、アフリカ的なデザインとも違うユニークさがあります。
ラッカアフリカで扱う製品は氷山の一角です。同様に素晴らしいモダンデザインの製品がアフリカでどんどん生まれているはずなんです。
さらに、アフリカのモノづくりの現場には、サステナビリティや地域社会への貢献が当たり前に組み込まれています。
例えば、ライフスタイル織物メーカーのMia Mélange(ミアメランジェ)社は、女性の雇用率、教育水準の低さを解決するために、女性だけを雇って教育し自立を促しています。
CSRやマーケティングの一環としてではなく、すごく自然に事業のなかに取り入れているんです。働き方にもゆとりがあって、楽しみながら仕事をしているように見えます。
アパレル関係では特に、グローバル企業が劣悪な環境の工場で従業員を働かせ、大きな問題として取り上げられたことがあります。僕は、誰かと一緒に仕事をするときに、そういう巻き込み方は絶対にしたくないんです。
モノづくりの品質をキープしつつ、現地の人々のリズムと暮らしも維持したい。そして彼らがきちんと儲かる値段で買い取って、日本で販売したいと考えています。
ーー事業を持続可能にするために、目指すゴールはありますか?
今、ラッカアフリカで扱っているブランドは大きく分けてMungo(マンゴー)社とMia Mélange(ミアメランジェ)社の2つ。
まずは1ブランドにつき1億円の売り上げを目指したいです。そしてラッカアフリカがプラットフォームになって、「いいものを作ってラッカアフリカに出店すれば売れる」と思ってもらえる立ち位置を目指したいですね。
そうすれば、アフリカの人も「もっと良いものを作ろう」とか「もっと個性を出していこう」となるはずです。
1ブランドで1億円の売り上げが立てば、20ブランドで20億円。売上20億円は、マザーズに上場するくらいの規模です。アフリカ関連の事業で上場できれば、「アフリカって儲かるんだ」と注目も集まるはず。そうすれば、もっとアフリカに取り組む人が増えて、色々なものが開拓されるはずです。
ーーすごいですね!伊関さんのその情熱はどこから湧いてくるんですか?
「今までとは違う発展の仕方があるんじゃないか」という期待があるのかもしれません。僕らができなかった発展を、彼らならできるんじゃないかと考えています。
これまで先進国は自分たちの軸で物事を考えてきました。それはDeveloping country(開発途上国)とDeveloped country(先進国)という言葉に象徴されています。先進国からみた「あるべき幸せの形」があって、それを追いかけてくるDeveloping country(開発途上国)があると。僕、この考え方ってすごく傲慢だと思うんです。余計なお世話ですよね。
確かに、アフリカには貧しい人もたくさんいます。でもみんながみんな、絶望に打ちひしがれて暮らしているわけではないと思うんです。実際に南アフリカに住んでみて感じたのですが、みんな毎日楽しそうに暮らしていて、僕ら日本人より幸福度が高そうに見えることもありました。苦しい時は親戚・友達と助け合って、何かあればお互いに助け合いながら生きています。
日本は経済的には豊かですけど、人と人の繋がりが希薄になって、高い自殺率も社会問題になっています。
だから、人との繋がりを大事にする暮らしを維持したまま発展していってほしいです。僕らとは、全然違うやり方でもっと幸せになってほしい。そしてそれを今度は日本に逆輸入したいんです。
「LEKKER(ラッカ)」は南アフリカの言葉で、「美味しい」「楽しい」という意味が1つになった言葉です。友人・家族と美味しい食事やハッピーな時間を楽しむ文化が根付いていることを表す、素敵な言葉だと感じています。
ーー自分たちの価値観を押し付けずにその国が持っている良さを見つけ、そこから学ぶんですね。
はい。アフリカというと、少なからず不衛生なイメージや貧しい子供が学校に行けない…みたいなイメージがあると思います。でも、「ボランティアをしてアフリカを助けてあげなきゃ」といったイメージを変えて、ビジネス対象として見てもらえるようにしたいんです。
日本で知られていない素敵なアフリカプロダクトを通じて、アフリカのイメージをアップデートするとともに、ラッカな時間をお届けしたいのです。
その理想を実現するにあたって、コストを削減し低価格競争になりがちなコモディティ商品では厳しいと思うんです。
でも、新しい製品は値段も必要とされる価格で売れば良い。現地の人々の生き方や暮らしを保てる価格で日本で売って受容されれば、アフリカの人たちからするとインパクトが大きいのではと考えたんです。
モダンアフリカ製品のECプラットフォームを目指して
ーー会社を作りたい気持ちは、昔からあったんですか?
大学生の頃から「自分が生まれた理由」みたいなものを知りたいと考えていました。自分にしか感じられないこと、考えられないことがあるはずだと、心のどこかで信じていたんです。
だから20代のうちに何かアクションを起こすと決めて、起業のための領域や方法をずっと探していました。
トヨタに入社した理由の一つは、これだけ部品数の多い自動車産業を理解できれば、どんなものでも作ったり売ったりできるんじゃないかと考えたからです。
アフリカ担当になったのは偶然ですが、南アフリカに駐在して日を重ねるごとにその魅力を実感し「日本に帰ったらアフリカ関連の事業で起業しよう」と決意しました。
当時はアフリカで会社を立ち上げることも考えていたので、ケニアに1週間滞在してコワーキングスペースを5箇所ほどまわったりもしましたよ。でも、展示会に足を運び、色々な人と話す過程で、日本でできることがたくさんありそうだと感じたんです。
ーー会社の立ち上げ当初から変わらないことはなんですか?
何百人ものお客様に買っていただいて、多くの方に、ブランドの背景も含めてラッカアフリカの商品を受け入れていただきました。ユーザーインタビューも行い、僕がモダンアフリカ製品に対して「良い」と感じた直感は正しかったと確信しました。
InstagramやYouTube、Webサイトを通じて写真や文章でブランドの魅力を伝えてきたのですが、伝わった人に買ってもらえています。同じ価値観の人がいることは素直に嬉しかったです。
ーー逆に、運営する過程で新しい発見はありましたか?
ユーザーから使い方提案があったことは新鮮な発見でした。自分たちが伝えたことがドンピシャで伝わって売れるのも嬉しいですけど、ユーザーが自分で解釈してアフリカの魅力を発見してくれるのも同じくらい嬉しいですね。
ーーちなみに、ラッカアフリカは、ワインも扱っていますよね。アフリカにワインのイメージがありませんでした。
南アフリカでは、1,000円も払うとめちゃくちゃ美味しいワインを楽しめます。調べたら国内には約500ものワイナリーがありました。ワインをつくるのに適したベルトにちょうど入っていて、生産量だけでいうとチリより多くて世界第8位なんですよ。ただ、ヨーロッパを中心に輸出されているので、日本に届いてないんです。
ーー今後の展望を教えてください。
もっともっといろんな国のアフリカ製品を扱いたいです。コラボ商品にもチャレンジしたいですが、まずは先ほどお話ししたように1億円規模のブランドを20個くらい作ること。
昨年度で売上1,000万円を達成したので、「知ってもらえれば売れるんだ」と実感しました。1,000万円の10倍が1億です。そう考えると手の届かない夢物語ではないですね。
また、今後は、アートも扱いたいと考えています。アフリカの場合、モノを輸送しようとすると距離があって大変なんです。でも、向こうのアーティストの写真や絵をデジタルデータにして日本でプリントすれば、売れた分だけ現地のアーティストにロイヤリティフィーを払うことができます。
これからアフリカ大陸は人口が増え、3人に1人はアフリカ人になるという予測も出ています。それに比例して、素晴らしいアート作品も増え、僕らが見たことがないものも出てくるはずです。
そのためにも、まずはラッカアフリカできちんとモノが売れる体制をつくることですね。