南アフリカワインの特徴と魅力

女性ソムリエ監修

山下 美月

ワインインポーターを経て、現在出版社に勤める。好きなことは、人をワインに例えること。ソムリエ、管理栄養士。

南アフリカワインってどんなワイン?

多民族国家で様々な文化、人種、言語、料理などが溢れている南アフリカ。

ワインにおいて言えば、フランスのように古い歴史があり、アメリカのように革新的な方法が用いられ、イタリアのように多品種が栽培されており、チリのようにコストパフォーマンスの優れた、まさに各国の良いところが凝縮したものが南アフリカワインです。

非常に古くからワインの歴史がありながら、注目され始めたのはここ数十年のことで、著明なワイン誌や有名ソムリエからも評価されている今注目の産地です。

南アフリカワインの歴史

南アフリカのワインの歴史は360年以上と古く、ヨーロッパを除くと最古の産地になります。

諸説あるものの、ヤン・ファン・リーベックが1655年にブドウの栽培を開始し、1659年にはじめてのワイン醸造に成功したとされています。

その後、迫害を受けフランスから南アフリカへ渡ってきたユグノー派の人々から、ワインの醸造技術を学び、各国へ輸出を行うほど産業として根付きはじめました。

しかしフィロキセラによる大打撃や、アパルトヘイトによる経済制裁でワイン産業は停滞。

南アフリカのワインの歴史は長いものの、長らく日の目を浴びない産地でした。

1994年にはネルソン・マンデラ大統領らの尽力によりアパルトヘイトを廃止。ようやくワイン産業も復活し、現在ではワイン生産国として上位を占めるようになりました。

それ以降は目まぐるしい発展を遂げており、2000年前後はカベルネ・ソーヴィニヨンやシャルドネ、ソーヴィニヨン・ブランなど国際品種で高い評価を得ており、濃厚でアルコール度数が高く、インパクトがあるワインが世界から注目されました。

さらに、ここ数年の動きとして、南アフリカに「土着品種」と「古樹」を大切にする新しいトレンドが生まれています。

情報が行き交い設備が整う中、旧世界と新世界の差がなくなりつつありますが、どうしても新世界に無いものが「アイデンティティ」。いわゆる、土着のブドウ品種というものに乏しい傾向があります。

そのような問題に物議を醸すべく、南アフリカならではの土着の品種を追求するクリエイティブでアクティブな新たな生産者が増えており、今でかつてない盛り上がりを見せています。

日本市場ではまだまだ浸透しておらず、国際品種に優れたコスパの良い産地というイメージの南アフリカですが、今後新たな顔を見せてくれること間違いなしの、注目の産地です。

南アフリカワインの特徴

南アフリカワインの味わい

多種多様な豊かな個性があるのも南アフリカの一つの特徴ですが、南アフリカの傾向として全体的に言えることは「綺麗な酸を持つエレガンスがありながら、親しみやすい果実味も持ち合わせている」ところです。

南アフリカのワイン協会会長であるマイケル・ジョーダンも、南アフリカのワインを「伝統と革新の最適なブレンドが可能な国」と評しており、旧世界のエレガンスさと新世界の果実味が融合した味わいを持つのが南アフリカワインの特徴と言えるでしょう。

最近では、冷涼産地での栽培が注目され、シャルドネやピノ・ノワールを栽培し、ブルゴーニュのような繊細でエレガントなワインを生み評価されていますが、やはり南アフリカならではの温かな果実味のニュアンスを感じます。

ワインと言えば、他のドリンクと比べると少し気難しくて敷居の高いイメージを持たれる方もいるかと思いますが、南アフリカのワインは優しく親しみやすいので、そういった方にこそ試していただきたい産地です。

南アフリカワインの価格

チリに続きコスパワインの代名詞として名が挙がっている南アフリカワイン。安くて美味しいワインを飲むならば外せない産地です。

しかしチリワインのコスパと、南アフリカワインのコスパは、意味するところが全く異なります。

一概には言えませんが、チリワインの価格帯の一番多いボリュームゾーンは1000円前後で、「安くても飲みごたえたっぷりで満足感の高いワインが飲める」のが特徴です。つまり、安いワインを選んでも当たり外れがなく、美味しく楽しめる安旨ワインが多くあります。

一方、南アフリカワインは二つの顔があります。上記のチリのような安旨ワインが評価されているのが一つと、もう一つは2000円~5000円の価格帯で、「ブルゴーニュなどの高級産地顔負けのハイクオリティワインが飲める」という顔を持ちます。

2000円~5000円くらいのワインをコスパワインと言われても、ピンと来ないかもしれませんが、例えば少なくとも5000円は超えるフランスのムルソーのようなハイクオリティワインが、南アフリカでは3000円ほどで飲めるといったことが多々あります。

有名なコンクールでも、フランスやイタリアの高価格帯のワインが表彰を飾る中、5000円ほどの南アフリカワインが肩を並べるということはよく見られる光景です。

それもそのはず、南アフリカワインはコスパワイン代表格のチリよりも人件費が安いだけでなく、一流の醸造家が南アフリカに集まっており、施設も研究所も完備されているのです。

南アフリカワイン産地の特徴

南アフリカワインの最大の魅力の一つとして、豊かな自然環境があります。ケープタウン周辺は特に貴重で多様な自然が見られ、世界自然遺産に登録されています。

それもあって厳しい農薬などの制限がされていますが、まさにケープタウンはブドウ栽培の中心産地で、ブドウ畑のほとんどがこの世界自然遺産として登録されています。

 

また、国をあげて自然保護の活動をしており、他国にないような「環境と調和したワイン生産」(IPW)や「生物多様性とワインのイニシアティブ」(BWI)などの制度が整っています。さらに、2010年ヴィンテージからサステイナビリティ(持続可能性)を保証するためのシールをワインボトルに採用する、世界初の取り組みもしています。

日本でも、有機農業や減農薬に取り組んでいる生産者もいますが、国全体での取り組みは南アフリカならではの魅力です。

南アフリカのトレンド

ここ数年の動きとして、南アフリカでは「古樹」、そして「土着品種」が貴重な南アフリカのアイデンティティとして積極的に取り入れられています。

著名なワイナリーはもちろん、新たな造り手がこぞって注目しており、南アフリカの新たな転換期と言えるでしょう。

なぜ古樹かと言うと、長い年月をかけることによってより深く根を伸ばし、よりテロワールを味わいに反映させることが可能となるからです。2018年から、35年以上のブドウからできたワインには、ブドウの樹齢年数を記入したシールを貼れるシステムが公的に導入されています。「オールドワインプロジェクト」という古樹を大切にする南アフリカならではのプロジェクトもあり、今後より広まっていくことが予想されます。

また、古樹が多いスワートランドでは「スワートランド・インデペンデント・プロデューサーズ」というグループを組織しており、国際品種の使用制限や酵母の添加、新樽率を制限するなど、より古樹の良さが伝わるよう様々な制限が設けられています。

「土着品種」で言うと、パロミノ、シュナン・ブラン、セミヨン、ミュスカ、サンソー、ポンタックなど、あまり聞きなれないブドウ品種が、南アフリカのアイデンティティを表現するブドウ品種として注目されています。実際、南アフリカのブドウ栽培はこれらの品種からスタートしたとされており、アイデンティティを表現するには適したブドウ品種とも言えます。

また、名高いピノ・ノワールと、樹勢が強く生産性の優れたサンソーとの交配品種であるピノタージュは、間違いなく南アフリカの地ブドウとして一番に名が挙がる品種です。

国際品種が南アフリカ内でもてはやされる中、「カジュアルで親しみやすいブドウ」の域を出ていなかった品種ですが、新たなフェーズを迎えている南アフリカで、今後期待できる品種のひとつになってきます。

南アフリカワインの代表品種

シュナン・ブラン

フランスのロワールが原産ですが、南アフリカで古くから栽培されており、南アフリカを代表するブドウ品種です。近年では、量より質を大切にする傾向や赤ブドウの人気から、シュナン・ブランの生産量は減少傾向にありますが、今でも南アフリカの中で最も栽培されています。

南アフリカのシュナン・ブランは、フランスよりも低温で発酵されることが多く、それによってフレッシュで瑞々しい味わいに仕上がります。

また、白ワインの中では珍しく、熟成感も楽しめる品種ですが、熟成はさせずに早期に楽しむことが多いのも南アフリカならではの特徴です。

ピノタージュ

南アフリカを代表する赤ブドウの一つで、ピノ・ノワールとサンソーの交配品種です。

南アフリカの地ブドウで、「ケープブレンド」と呼ばれる南アフリカならではのブレンドによく使われます。

エレガントで繊細なピノ・ノワールと、ふくよかでジューシーなサンソーの組み合わせで、タンニンはあるもののまろやかで丸みがあり、バランス型の味わいとなります。親しみやすい味わいなので、カジュアルに楽しめるタイプです。

シャルドネ

テロワールを忠実に反映するブドウ品種として、世界中、そして南アフリカで様々なスタイルで造られているブドウ品種がこのシャルドネです。

フレッシュで爽やかなシャルドネから、リッチでふくよかなシャルドネまでスタイルが幅広く、白ワインを代表するブドウ品種になります。

ワインの歴史的文化が新しい新世界のワインでは、しばしば「ブルゴーニュのようなワイン」が誉め言葉として使われますが、まさに南アフリカの冷涼産地では、ブルゴーニュのシャルドネを彷彿させるような、エレガントでありながら存在感のあるハイクオリティなシャルドネが生み出されており、世界でも注目されています。

ブルゴーニュへ修行している生産者も多く、いい意味で各国の違いが年々狭まってきています。ブルゴーニュは価格も高く、なかなか手が届きにくいという場合には、南アフリカのシャルドネという選択肢も大いにありでしょう。

ピノ・ノワール

赤ワインを代表する人気の高い品種で、エレガントで綺麗。芳醇な香りと優しいタンニン、そして豊かな酸を持ちます。シャルドネと同じく、ブルゴーニュのようなハイクオリティなピノ・ノワールが南アフリカでも生産されており、ブルゴーニュ好きにとっても注目の産地と言われています。

一概には言えませんが、ブルゴーニュよりも南アフリカのピノ・ノワールの方が陽性で明るい印象があり、エレガントさがありながら豊かな果実味を感じるため、ワインの酸味が苦手という人にもオススメです。

カベルネ・ソーヴィニヨン

力強い味わいと、しっかりとしたタンニンが特徴で人気の高いブドウ品種です。
フランスなどではメルローやカベルネ・フランとブランドされることが多いですが、南アフリカでは単一で造られることがほとんどです。

味わいは、フランスのカベルネ・ソーヴィニヨンと比べると、比較的タンニンがまろやかで果実味に富んでおり、とてもパワフルです。

シラー

南アフリカのテロワールに非常に適していて、ここ10年ほどで栽培面積が急激に増えているブドウ品種です。

色合いは紫がかったワインレッドで、スパイシーさや野性味、パワフルさが特徴です。冷涼産地で栽培されるシラーもあり、中にはフランスの北ローヌを連想させるようなエレガントシラーも造られています。

ソーヴィニヨン・ブラン

やっとここ数年日本市場にも進出してきたという印象の南アフリカのソーヴィニヨン・ブランですが、南アフリカでは18世紀のころから広く栽培されている、人気のブドウ品種です。

フランスやニュージーランドなどで多く栽培されており、フレッシュで爽やか、ハーブのような青っぽさが特徴ですが、南アフリカのソーヴィニヨン・ブランは、加えて丸み、ふくよかさを感じます。

南アフリカ内でのクオリティも年々上がってきており、今後さらに人気となってくる品種でしょう。

まとめ

転換期を迎え、さらなるニューウェーヴで盛り上がりを見せている南アフリカ。

「コスパが良くておいしい」だけでなく、古樹や土着品種などの「南アフリカらしさ」も、今後の見所のひとつとなるでしょう。

ぜひ自分の好みのワインを見つけ、素敵なワインライフを送ってくださいね。

 

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