南アフリカの国宝「シュナン・ブラン」の特徴

ラッカコーディネーター 山下 美月

南アフリカの国宝とも呼ばれるほど確固たる品質を誇る南アフリカのシュナン・ブラン。

今やシュナン・ブランを知らずして南アフリカを語れないと言っても過言ではないでしょう。

一言にシュナン・ブランと言っても幅広い顔を持つシュナン・ブランの魅力を、ソムリエ兼ライターの、ラッカコーディネーター山下美月がお届けします。

シュナン・ブランとは?

シュナン・ブランはその土地のテロワールや醸造方法などの特徴を反映しやすく、辛口〜甘口まで幅広い味わいを持ちます。

ワインの専門家であるジャンシス・ロビンソンはシュナン・ブランを「世界で最も多目的に使われるブドウである」と表現しているほど、その味わいは多種多様です。

原産地であるフランスのロワールでは、長熟向きのシュナン・ブランや貴腐ワインを生み出し、シュナン・ブランの代表産地となっている南アフリカでは酸が比較的穏やかで南国フルーツのようなフルーティーなワインが生産されています。

中でも南アフリカのシュナン・ブランは成功を収めており、特に古木のシュナン・ブランが今世界から注目を浴びています。

シュナン・ブランの歴史

シュナン・ブランの歴史は古く、9世紀にフランスのアンジュー地方で栽培されたところから始まります。この当時はシュナン・ブランではなくシュレネと呼ばれていました。元々酸がしっかりとしているブドウ品種で、しっかりと成熟させ、適切な醸造方法を行われなければ、ただ酸味の強いワインとなってしまう品種でもあります。そのため、安価で手軽なバルクワインやブレンド用として使用されていた時期もありました。

15世紀にはロワールのトゥーレ—ヌ地区で栽培され、その当時もシュレネと呼ばれていたのですが、1963年ステレンボッシュ大学のオルファ—教授によりスティーンがシュナン・ブランと同じ品種であると解明されます。

フランスから南アフリカへシュナン・ブランが来た理由については諸説ありますが、ヤン・ファン・リーベックが南アフリカにブドウを持ち込み、ブドウの栽培に成功。このときにはまだ、何のブドウ品種であったか定かではありませんが、その後リーベックの跡を継いだシモン・ファン・デル・ステルが1685年にブドウ園を建てたころにはシュナン・ブランはあったとされています。

また、ナント勅令廃止により国外に逃れたユグノーの人々がブドウを持ち込み栽培をしたという説もあり、まだ真相はわかっていません。

いずれにせよ南アフリカで栽培されたシュナン・ブランは成功し、現在18パーセントの栽培面積を誇り、南アフリカ内の生産量第一位のブドウ品種となっています。

かつては32%の栽培面積を占めていましたが、現在は赤ワインの生産量増加に伴い面積は減少。しかし当時よりは生産量が少なくなっているとは言え、その分現在残っているシュナン・ブランは古木も増えて高品質なワインが増えています。

有名なワイン誌「ワイン・アドヴォケイト」では、ワイン評論家のニール・マーティン氏が「南アフリカのシュナン・ブランは、世界を震撼させる」と評しており、今やシュナン・ブランは南アフリカなくしては語れない品種なのです。

生産地と味わい

有名な産地は原産地であるフランスのロワールと、主力産地である南アフリカです。

シュナン・ブランはテロワールをよく反映するブドウ品種で、味わいの変化に富んでおり、産地によって様々な顔を見ることができます。 

フランス

ロワールのAOCヴーヴレは粘土質の細かい粒子の土質のため、土の中の有機物も栄養分も多く、濃厚でしっかりとした味わいのワインが多く生産されます。また石灰質も含むため、味わいとしては酸を含んだシャープなスタイルになりやすく、長熟にも耐えうるワインも生まれています。

この産地で生産されたシュナン・ブランを使用して、瓶内二次発酵にて12カ月以上熟成されたスパークリングも生産されており、ふくよかでありながら酸のバランスも良く非常に高品質です。 

AOCサヴ二エールは、とても日当たりが良く水はけも良い斜面をもつ土壌となります。

しっかりとブドウが成熟するため、酸の尖ったワインになることもなく、健康的に成熟したフルーツテイストを持つふくよかなボディのワインが生まれます。ビオディナミの生産者が多いのも、健康的なブドウを栽培できる素晴らしい土地柄ならではでしょう。ボディはふくよかであっても味わいは辛口のものが多く、優秀な辛口シュナン・ブランが評価されています。

AOCコトー・デュ・レイヨンは大西洋や近くのレイヨン川の影響を受け霧が発生しやすい土地となっており、貴腐菌が発生する土地です。

ロワールの3大貴腐ワインの生産地のひとつとして有名で、ソーテルヌの貴腐ワインにも引けを取りません。また、収穫を遅くして果実の糖度を高める「遅摘み」による甘口ワインもあり、どちらもハチミツのような密っぽいニュアンスを伴います。

南アフリカ

南アフリカでは長熟させるシュナン・ブランは多くなく、全体的な割合としては他の白ワインと同様早く飲まれる傾向にあります。

低温発酵させるため、フランスのシュナン・ブランより酸味が抑えられ、黄桃や洋梨、マンゴーのような南国フルーツのようなトロピカル香のするものが多くあります。樽との相性も良く、樽熟成させるとバニラやナッツのようなリッチな味わいも加わります。南アフリカでシュナン・ブランを栽培している有名な醸造家であるケン・フォレスター氏は、このシュナン・ブランを「アフリカの国宝」と評しているほどで、南アフリカ固有のブドウ品種となってきていると言っても過言ではないでしょう。

生産量から見ても、南アフリカのシュナン・ブラン生産量はなんとフランスのシュナン・ブラン生産量の約2倍。特に、南アフリカの西ケープ州、コースタル地域にて栽培されています。ステレンボッシュではワイン醸造施設や研究機関、醸造学などを学べる大学も完備されおり、シュナン・ブランの品質上昇も頷けます。

その他地域

フランスと南アフリカで知名度の高いシュナン・ブランですが、実は他の国でも栽培されています。アメリカでは全域でシュナン・ブランが栽培されており、安価なワインが多くあまり知られてはいませんでしたが、実はフランスを上回る生産量を誇ります。

またアルゼンチンでは、シャルドネやトロンテスなどと一緒にブレンドされる品種として長らく栽培されていましたが、近年ではブレンドせずに単一で造られたり、高品質なシュナン・ブランが生まれたりしています。 

南アフリカならではの古木シュナン・ブラン

南アフリカでは、古木はフィロキセラなど病気の影響を受けやすく、またブドウの収穫量も若い木に比べ減ってしまうことから定期的に苗の植え替えを行うのが良いとされていました。また、テロワールよりも生産者の想いを反映したワイン造りが主で、テロワールにはあまり注目されていなかったのです。

しかし最近では、よりその土地にしっかりと根を張りテロワールの特徴を反映する古木が注目されはじめています。“南アフリカらしさ”をより求める時代になってきたのでしょう。シュナン・ブランの原産地はフランスで決して土着の品種とは言えませんが、今やフランスの2倍の生産量を誇る南アフリカを代表する品種となっており、生産者の熱い想いが入っています。

現在、若い勢いのあるワイナリーも歴史のある老舗のワイナリーも、国際品種よりも南アフリカらしさを表現できるワイン造りを目指す動きがあります。その中で、古木から造られるシュナン・ブランは、南アフリカの一つの個性になるかもしれません。

さいごに

チャレンジングな人々が多い南アフリカで、より南アフリカらしさを表現できる品種、アイデンティティの探求が非常に求められるようになってきています。

ウォーカーベイやエルギンで造られる美しいシャルドネやピノ・ノワールも見逃せませんが、土着となり得るマイナー品種、また南アフリカを代表するシュナン・ブラン、そしてそれらのテロワールを反映する古木は、今後飛躍的な活躍が期待できる、まさに注目品種です。

ラッカアフリカでお取り扱いのあるシュナン・ブラン

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ラッカコーディネータープロフィール

山下 美月

ワインインポーターを経て、現在出版社に勤める。好きなことは、人をワインに例えること。ソムリエ、管理栄養士。

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