ワイン講座「南アフリカワイン、ついに開花宣言! 〜これを知らずして今のワインを語るなかれ〜」を受講してきました!

ワイン専門誌「Winart(ワイナート)」3月号の、南アフリカワインの巻頭特集にあわせて企画された特別ワイン講座です。初の南アフリカ特集ということで南アフリカワインの注目度が高まっていることが伺えます。

講師の方にお話いただいた内容をレポートという形でお届けいたします。

講師は高橋佳子さん

高橋先生はJSA認定ソムリエ、さらに、WSET® Level4 Diploma in Wines and Spiritsをお持ちのワインコンサルタントでいらっしゃいます。

また、Premium Independent Wineries of South Africa (PIWOSA) という11社のワイン生産者グループが主催する「Women In Wine Initiative(女性向けワイナリーの研修プログラム)」に参加し、収穫期の南アフリカを訪れ、多くの経験を積まれています。

当日の流れ

  1. 南アフリカワインの概要
  2. 「The Old Vine Project」という新潮流
  3. テイスティング

南アフリカワインの概要

南アフリカの気候

南アフリカの主要産地は西ケープ州。

地中海気候で、ブドウの育成期間の雨量が少ない一方で、夏場の熱い時には30度を超える日もある。 同地域は南極から流れる冷たいベンゲラ海流(大西洋)と、比較的暖かいが、なお冷たいインド洋からの海流が交わる場所に位置する。

ケープタウンは波が荒く、サーフィンのメッカとしても知られる。ワインメーカーの中にも、多くのサーファーがいる。

南アフリカワインの歴史

新世界のワインと位置付けられるが、その歴史は1600年代まで遡る。 オランダ東インド会社がインドまでの中継基地としてケープタウンに入植。

その際、ヤン・ファン・リーべックがブドウを持ち込んだ。 彼は日記をつけており、1659年2月2日に「ケープのブドウから初めてのワインが作られた」と記している。

さらに、1700年代、甘口ワインをヨーロッパに輸出することで栄え、ナポレオンも愛飲したとされる。

1800年後半、世界中のブドウに大きな被害を与えたフィロキセラは南アフリカにもやってきた。

その後、アパルトヘイト(人種隔離政策)によって、国際的に経済制裁を受けていたが、1990年以降マンデラ政権が誕生し、民主化に向かい、ワインの輸出も再び盛り上がっている。

2010年、サッカーワールドカップが南アフリカで開催され、日本でも南アフリカワインが紹介された。

今年2019年9・10月には、日本でワールドカップラグビーが開催されるということで多くの生産者が来日する。

南アフリカワインの原産地呼称制度

南アフリカでは、1973年にEU法に対応する原産地呼称制度(WO:Wine of Origin)を制定。

最も大きなカテゴリーは州、ついで、リージョン。 比較的聞き馴染みのあるステレンボッシュはその次の単位である地区(District)である。

さらに小さな分類である小地区(Ward)は発展途上の概念。 WardをDistrictに切り替えたりと安定的ではなく、最新の情報は南アフリカワイン協会(WOSA:Wines of South Africa)のウェブサイトを参照されたい。

近年、南アフリカワインの日本での認知度は高まりつつあるが、生産量そのものは減少している。

背景としては、国として高品質ワインにシフトしており、低品質なワインが淘汰されていることが挙げられる。 そうした全体の動きの中で、これから説明するThe Old Vine Projectは重要なトレンドの1つ。

「The Old Vine Project」という新潮流

南アフリカワインのトレンド

The Old Vine Project(OVP)は樹齢35年以上の南アフリカの古木(こぼく、Old Vine)を残そうという運動。

35年というのは同プロジェクトでの定義であり、世界的に何歳だと古木というのはない。 厳しい南アフリカワインの気候の中でも、冷たい冬の風にも耐え、嵐にも耐え、同じ場所に育った古木は、土地の良さをもっともよく表現していると考えられている。

この運動の中心人物がローサ・クルーガー(Rosa Kruger)。

2002年から一軒一軒ブドウ農家を訪問し、南アフリカに残る古木の記録を残していった。 いつ、どの区画に何ヘクタール、植樹された苗木であるかなどの仔細な情報は全てウェブサイトで公開されている。

同運動に参画するワイナリーについても同様にウェブサイトに公開されている。

しかし、記録がなされただけでは古木は救われない。 南アフリカでは、リーフロール病というウイルスが流行ったこともあり、安定した収穫を考えれば、一般には、ウイルスフリーの苗木に植え替えようという動きがある。つまり、古木は植え替えられる運命にある。

Old Vineは、株仕立て(Bush Vine、ブッシュバイン)で低収量である。 一方、35年以上、長いものでは100年以上の樹齢になるため、土地の個性、テロワールを色濃く反映しているという優れた点がある。

こうした良さを伝えながら、Old Vineから出来るワインがきちんと評価され、適正な価格で取引されるようPRに努めている。

今回飲んだワインリスト

今回飲んだワインリスト

◎はThe Old Vine Projectに参画するワイナリー

  1. Ataraxia Chardonnay ¥4,700
  2. ◎ Thorne & Daughters Paper Kite Old Vine Semillon ¥5,300
  3. ◎ Alheit Vineyards Magnetic North ¥10,000
  4. Van Loggerenberg Break a Leg Blanc de Noir ¥2,400
  5. Crystallum Cuvée Cinéma Pinot Noir ¥6,000
  6. Momento Grenache Noir ¥4,500
  7. ◎ Mullineux Syrah ¥4,670

テイスティング

テイスティング

Ataraxia Chardonnay

シャルドネは世界中で作られていて、産地の実力を知るのに良い品種。

アタラクシア(Ataraxia)は常に安定した品質を誇る。 アタラクシアのケビン・グラント(Kevin Grant)は南アフリカで初めてピノ・ノワールを生産したハミルトン・ラッセル(Hamilton Russell)で10年ほどワインメーカーを務め、2004年に独立。

新しい産地であるウォーカーベイ地区で、ウイルスフリーの苗木を選んで植樹。20年を経過しておらず、これからのさらなる飛躍が非常に楽しみなワイナリー。

ケビンはワインメーカーであるよりソイルメーカー(Soil Maker)を自称し、自分の土地でしか表現できないワインの生産に努めている。

テースティングしたシャルドネは酸味があって、骨格もあり、複雑みに負けない、果実み酸味がある。

Thorne & Daughters Paper Kite Old Vine Semillon

樹齢35年以上の古木は、南アフリカの栽培面積の3.4%3190ha(ヘクタール)を占める。

50年以上では36ha。 さらに、100年以上は7.5ha。そのうち、5.5haはセミヨン。

セミヨンはシュナン・ブランとともに最初に南アフリカに持ち込まれたブドウ品種。 そんな長い歴史のあるセミヨン100%で作られたのがこのワイン。 1964年に植樹されたスワートランド地区のセミヨンである。

灌漑を行なっておらず、自然発酵、自然マロラティック。 テクスチャーと余韻の長さが特徴。果実み以上にミネラル感があり、同時に、酸味、骨格がある。

Tim Atkinというマスターオブワインの等級では95点を獲得。

Alheit Vineyards Magnetic North

クリス・アルヘイト(Chris Alheit)はOld Vine Projectのローザともにブドウ農家を訪れて古木を探し、南アフリカのテロワールを最大限表現したワイン生産をしようとしている。

古木を維持してもらうために、ブドウ生産者から極力高値で買い付ける。

クリスは白ワイン中心のワインメーカー。

彼の目のつけた古木はオリファンツリバー(Olifants River)というケープから3時間の場所に位置するシュナン・ブラン。自根で接ぎ木はしていない古木である。

ルイボスティーの産地であるセダーバーグ(Cedarberg)という2000m級の山に囲まれ、海からおよそ30-40kmの距離。他の場所にはない、独特のテロワールがある。

もともと、協同組合にブドウを収める産地で、名のあるワイナリーは限定的だったが、ローザとともにGoogleマップでも表示されない、秘境中の秘境に古木を発見した。

ミネラルリッチなワインで、石をなめているようなミネラル感。モモとか果実の香りもある。 残念ながら、在庫がないので、このセミナーのワインを楽しんでほしい。

Van Loggerenberg Break a Leg Blanc de Noir

樹齢32年のサンソー で作るロゼワイン。 直接圧搾で作られている。

繊細、デリケートで、ほんのり苦い。

収穫の大事な時期に足を骨折し、仲間に助けられたことから「Break a leg」というネーミングにした。亀がギブスをはめている絵も挿入されている。

Crystallum Cuvée Cinéma Pinot Noir

ピーター・アラン(Peter Allan)は奥さんの実家のワイナリーである、ガブリエルスクルーフ(Gabrielskloof)の醸造家をやりながら、自分のブランドのワインも同じセラーでつくっている。

3種類のピノ・ノワールを生産。 ウォーカーベイ地区の中腹のワイナリーで、樹齢は10年程度のウイルスフリーの苗木である。 ブドウの状態にもよるが、およそ50%は全房発酵で、複雑みが加わる。 まだ若い、ピチピチとした雰囲気としっかりとした骨格も感じられる。 これからが非常に楽しみなワイナリーである。

2015年は南アフリカワインの生産者が口を揃えてベストイヤーと言う。 2016は干ばつが続いた。 2017年は2015年を経験した生産者がさらに素晴らしい年で、より洗練されているという。

Momento Grenache Noir

非常にエレガントでチャーミング。果実みが新鮮。 ”単にアルコールが強くて、ジャミー”ではないグルナッシュの良さを引き出している。

酸を補うために、シラーなどとブレンドして使われることが多いが、これはグルナッシュ100%。30%は全房発酵。

Mullineux Syrah

繊細で、黒胡椒を感じる、ひきしまった感じ。

スワートランドでは、この地域らしいワインを表現しようとするスワートランド・インデペンデント・プロデューサーズ(Swartland Independent Producers:SIP)という団体がある。 今の南アフリカワインをリードするワイナリーが多く参画している。 マリヌー (Mullineux) もその1つである。

ラッカアフリカでお取り扱いのあるワイン

ワイン講座で取り上げられていましたアタラクシアについては、シャルドネとピノ・ノワールのご用意がございます。ぜひ冷涼なウォーカーベイ地区のこだわりの一本をお楽しみください。

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