ラッカコーディネーター 山下 美月
ブドウは品種ごとに個性や特徴がしっかりとしており、ワインを知る上で非常に大切なポイントです。
今回は南アフリカワインのブドウ品種の個性を動物に見立ててイメージ。赤ワインの主要なブドウ品種のカラーを知り、あなたにぴったりなワインを是非見つけてみてください。
白ワイン編はこちら!白ワインのブドウ品種を動物に例えてご紹介
【カベルネ・ソーヴィニヨン】雄々しく豊かな鬣をなびかせる、若き百獣の王「ライオン」
カベルネ・ソーヴィニヨンなしにはワインは語れない、ワイン界の王とも言える品種です。
何年もの熟成に耐えうる強靭なタンニンと、その依然とした骨格に、古くから人々の心を魅了するワインを生み出してきました。
私がまだワイン業界に入りたてだった頃に、カベルネ・ソーヴィニヨン主体のあるボルドーワインに出会ったのですが、まだワインを何も知らなかった当時ですら、グラスに注いだそのワインにハッとさせられたのを覚えています。
カベルネ・ソーヴィニヨンには厳格で威厳を感じさせられるような一面がある一方、南アフリカのカベルネ・ソーヴィニヨンは、果実味が多くしっかりとしたタンニンがありながらも滑らか。威厳と猛威を振るう百獣の王というよりは、雄々しく豊かな鬣をなびかせる、尊名な若き百獣の王というイメージです。
原産地 | ボルドー(フランス) |
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主な産地 | フランス、トスカーナ(イタリア)、チリ、オーストラリア、アメリカ |
香り | カシス、ブラックベリー、プルーン、杉 |
味わい | しっかりとしたタンニン、濃厚、力強さ、骨格 |
ペアリング | 牛肉の赤ワイン煮込み、ビーフシチュー、牛肉のグリル、メンチカツ |
【ピノ・ノワール】強く美しき女王「チーター」
カベルネ・ソーヴィニヨンを王と例えるならば、対するピノ・ノワールは強く美しき女王チーターでしょう。
南アフリカの中でも、ブルゴーニュのようなエレガントで綺麗なピノ ・ノワールが造られ、高評価を得ています。特に最南端にあるワイン産地、ウォーカーベイは、「ヴァン・ド・テロワール」と呼ばれるほど現在注目されている場所で、冷涼な気候に適した高品質なピノ ・ノワールやシャルドネが栽培されています。
ウォーカーベイには老舗の名門ワイナリー「ハミルトン・ラッセル・ヴィンヤーズ」や、またこのワイナリーの醸造責任者を務めたのち独立したワイナリー「アタラクシア」など、名を馳せた有名な生産者が集結しています。
全体としては綺麗なだけでなく果実味もあり、エレガントなのにどこか力強ささえ感じるようなピノ ・ノワールが多くあります。
ピノ ・ノワールの中には、美しく綺麗で、少し儚げさも感じるようなワインもありますが、南アフリカのピノ ・ノワールはそれには該当しません。
女性的でエレガントでありながら、実は誰よりも強い闘志を秘めているような力強さを感じる興味深いブドウです。
原産地 | ブルゴーニュ(フランス) |
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主な産地 | フランス、ニュージーランド、オーストラリア、カリフォルニア(アメリカ) |
香り | ラズベリー、チェリー、赤スグリ、紅茶 |
味わい | タンニンが少なく滑らか、エレガント、綺麗、酸しっかり |
ペアリング | ラタトゥイユ、ラザニア、キッシュ |
【シラー】ワイルドでパワフルな「熊」
ワイルドなスパイシーさと、パワフルで力強いタンニンを持つシラーは、まるで熊のようにパワー溢れるブドウ品種です。
オーストラリアをはじめとするニューワールドではシラーズが多く、その他の国ではシラーと呼ばれます。同じ品種ながらスタイルがまったく異なっており、シラーズはより力強く果実味が全面に出るタイプが多く、シラーはスパイシーでありながらシラーズに比べて綺麗なスタイルが多いです。
生産国で呼び名を変えるのではなく、スタイルによってシラーズかシラーか変えている生産者もいます。
南アフリカではシラーと呼ばれる方が断然多いですが、フランスのローヌのようなシラーと比べると、シラーズよりの力強さと熟した果実味を感じます。最近では高品質でエレガントなシラーも造られてきており、評価が高く人気がありますが、南アフリカのシラーのイメージとしては俄然こちらのほうが強いでしょう。
南アフリカの気候が非常に適しており、ここ10年で急激に栽培量が増えたブドウ品種です。
パンチがありボディ感のあるシラーが多いので、ジビエなどの肉料理や薬味がしっかりとした料理、カレーなどのスパイスにも負けません。アウトドアに持っていって、グリルしたお肉と合わせて楽しむのも良いでしょう。
原産地 | ローヌ(フランス) |
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主な産地 | ローヌ(フランス)、オーストラリア(オーストラリアではシラーズ)、アメリカ |
香り | ブラックベリー、ドライフルーツ、コショウ |
味わい | 濃厚でスパイシー、力強い、タンニンしっかり、パワフル |
ペアリング | スパイシーな肉料理、鴨のロースト、コロッケ |
【ピノタージュ】内なる力強さを秘めた「スプリングボック」
サンソーとピノ ・ノワールの交配で生まれた、南アフリカを代表する赤ワインの品種です。色合いは紫に近いボルドー色で、香りも色から連想させられるようにブラックチェリーやプラムの華やかな香りと、黒系果実のダークフレーバーがぱっと広がります。
豊かな果実味を主体とした味わいを持ち、スパイシーで若々しい力強さを持ちます。やわらかなサンソーとエレガントなピノ ・ノワールを配合させた品種らしく、滑らかさと綺麗な酸はありますが、芯はエネルギッシュで力強くスパイシーさを兼ね備え、良い意味で意外性に富んだ品種であると言えるでしょう。
例えるならば南アフリカを代表する動物スプリングボック。鹿のようなビジュアルで、可愛らしいルックスを持っているのですが、驚くべきはそのジャンプ力。か弱そうな足で自分の身長の2倍ほどのジャンプができる秘める力の持ち主です。
嬉しいときにも驚いたときにも、とにかく高い跳躍力でジャンプし、時には肉食動物の狩りの意欲を減少させてしまうほどだとか。見た目や香りに反して内なる力強さを秘めた魅惑のワインです。
原産地 | 南アフリカ |
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主な産地 | 南アフリカ |
香り | ブラックチェリー、プラム、黒スグリ |
味わい | フルボディでふくよか、スパイシー、豊かな果実味 |
ペアリング | ハンバーグ(デミグラスソース)、チョコレート、ローストビーフ、砂肝のアヒージョ |
【メルロー】力持ちだけど優しく頼もしい「ゾウ」
南アフリカは全体的に単一品種で造られることが多いですが、メルローは他の国でも単一品種で造られることが多いブドウ品種です。
南アフリカのメルローは、以前は軽やかなワインも多く生産されていましたが、現在、特にステレンボッシュやパールでは、カベルネ・ソーヴィニョンと同じく濃厚で強いものが多くなってきました。加えて、強いボディがありながらも優しく丸みがあり、まろやかという魅力もあります。
カベルネ・ソーヴィニヨンは強いタンニンとボディがあり、なかなか単一では楽しみにくいとことがありますが、メルローをブレンドさせることによって驚くほど滑らかで丸みのあるワインとなります。
生産者によっては、ワイナリーの看板となるフラグシップワインをメルロー100%で造ることも多く、そのポテンシャルと魅力は計り知れません。
他のぶどう品種とブレンドしても喧嘩せず、単一ではより一層存在感を発揮させる、優しく頼もしい像のようなブドウです。
原産地 | ボルドー(フランス) |
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主な産地 | フランス、トスカーナ(イタリア)、チリ、オーストラリア、アメリカ、日本 |
香り | ダークチェリー、ブルーベリー、プラム |
味わい | まろやかなタンニン、濃厚、口当たりの良い丸みのある味わい |
ペアリング | ビーフシチュー、牛すじ煮込み、チョコレート(ミルク) |
【サンソー】温和で母性溢れる「牝鹿(メジカ)」
穏やかな酸と柔らかな果実味が魅力的なサンソ―。
フランスで多く生産され、グルナッシュやカリニャンなどとブレンドされることが多いですが、南アフリカでは単一で造られることが多く、ぜひ試して欲しい品種の一つです。
タンニンや渋みも感じられるものの決して強くはなく、優しく包み込んでくれるようなジューシーさもあり、愛情深く優しい雌鹿を連想させます。現在南アフリカでは、古木から造られる深い味わいと、ピノ ・ノワールのような綺麗な味わいを持つサンソーがトレンドとなっており、注目のブドウ品種です。
今は南アフリカの中で2%しか生産されていない品種ですが、1900年代の南アフリカでは黒ブドウ生産量1位で、南アフリカを代表する品種となっていました。
その品種が今再度注目されはじめ、サンソー含めマルサンヌ、ルーサンヌなどマイナーとされるブドウ品種が日の目を見るようになってきました。時代の流れに敏感な若手生産者たちも乗り出し高い評価のワインを生み出しており、チャレンジ精神旺盛な南アフリカらしいマイナー品種のニューウェーブが来ています。
人を選ばず万人受けしやすい品種なので、赤ワインの渋さが苦手な人や、ワイン初心者の人にもオススメ。飲むとほっと落ち着くような、そんな優しい品種です。
原産地 | プロヴァンス(フランス) |
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主な産地 | フランス南部、チリ、オーストラリア |
香り | ラズベリー、イチゴ、カシス |
味わい | 穏やか、優しい、ジューシー、おだやか |
ペアリング | 手羽先、ローストしたナッツ、ミートスパゲッティ |
まとめ
いかがでしたでしょうか。あなたにぴったりのワインを見つけられましたか?
各国全体的に、近年はワインへの過度な脚色が減り、化粧美人よりすっぴん美人を良かれとする流れが多くなってきています。
南アフリカにしても、ブルゴーニュに近い味わいの綺麗なシャルドネ、ピノ・ノワールの評価が高まっていたり、エレガントシラーなどのスタイルも増えてきているこの頃ではありますが、そうは言っても南アフリカの特徴として、エレガントに仕上げていてもどこか内なる強さのような、秘めた力のようなエネルギッシュさを感じるワインが多くあります。
今回は南アフリカのブドウ品種での動物イメージを記載しましたが、南アフリカのワインはもちろん、他にもたくさんのワインを飲んで豊かなワインライフを送ってみてくださいね。
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ラッカコーディネータープロフィール
山下 美月
ワインインポーターを経て、現在出版社に勤める。好きなことは、人をワインに例えること。ソムリエ、管理栄養士。